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Hossi-Yさんの映画感想文
01


 八本目*雨あがる

あらすじ:新緑の頃。長雨による川止めのため、宿屋に足止めされた武士 三
     沢伊兵衛(寺尾聰)とその妻 たよ(
宮崎美子)の物語。今日も雨
     が、いつあがるともなく、降り続いていた。

     腕はたつが、どうした訳か仕官が勤まらない。しかし、人一倍の優
     しさと思いやりは、同宿の様々な人達から慕われるようになる。そ
     んなある日、その藩の内輪もめを仲裁したことから藩主 永井和泉
     守重明(三船史郎)に認められ、剣術指南役への召抱えの話しが持
     ち上がる。藩主を前にした試合も無事終えたが、結局はその前にや
     ってしまった賭け試合がばれ、話しはオジャン。

     その頃、やっと雨も上がり、旅立つ二人。たよのことを考えるとや
     り切れない気持ちの伊兵衛であったが、たよの言葉に元気付けられ、
     新たな気持ちでの再出発を決意をした。
     その頃、永井和泉守は重役の頭の固さを嘆き、伊兵衛を迎えるため、
     自ら馬を走らせるのであった。

感想  :故黒澤明監督の脚本(遺稿)を黒澤組の助監督だった小泉堯史さん
     が初監督した作品です。黒澤監督が「見終えた後、さわやかな気持
     ちになる作品」をと言った趣旨は見事に達成されていると思います。
     中でも、健気で気丈な武士の妻たよを演じる宮崎美子が素敵です。
     また、宿屋に同宿する夜鷹おきん役の原田美枝子もいい味を出して
     います。
     物語としては、ダイナミックな起伏があるわけではなく、どちらか
     と言えば淡々と進むものですが、見ていて心地よい気分に浸れます。
     黒澤作品で言えば、「どですかでん」に似た味と言えばよいでしょ
     うか? それでも、私としては「阿弥陀堂だより」により一層の共
     感を覚えるものでした。







 七本目*たそがれ清兵衛

あらすじ:明治を数年後に控えた幕末の庄内地方。そこにある小藩の下級武士
     井口清兵衛(真田広之)とその幼なじみ朋江(
宮沢りえ)の物語。
     清兵衛は、仕事が終わると仲間との付き合いもせず、帰宅する冴え
     ない貧乏武士で、周りから「たそがれ清兵衛」と陰口を言われてい
     た。しかし、ある日、朋江の兄の危機を木の小太刀1本で救ったこ
     とから運命は変わり、遂には、家老の命により余吾善右衛門(田中
     泯)を上意討ちする羽目となる。

感想  :山田洋次監督の初の本格時代劇でもあり、02年から03年にかけ
     て、日本の映画賞を総なめにした作品です。
     一般的な評価は置くとしても、私自身も大変好きな作品です。小藩
     の下級武士の厳しい生活を克明に描写し、その中に家族愛と武士と
     してどうしようもない生き様が描かれます。しかし、その中に、朋
     江への仄かな思いが加わり、映画の温もりが保たれます。山田監督
     の円熟の技と言えるでしょう。
     また、主役3人も熱演で、特に、宮沢りえは絶品の演技で作品にし
     っとりとした華やかさを添えています。いつの間にこんなに素敵な
     女優に育っていたのかと思ってしまいました。(やはり、相撲取り
     のおかみさんなんかにならなくて、本当に良かった。)最近の若い
     女優でこんなに華のある人は珍しいでしょう。







 六本目*阿弥陀堂だより

あらすじ:売れない作家の夫 孝雄(寺尾聰)と心を病んだ妻 美智子(樋口可
     南子
)が夫の故郷、長野に帰った来たところからこの物語は始まる。
     都会の喧騒と医師というハードな仕事が彼女の精神のバランスを崩
     したのであろうか。しかし、優しい信州の自然とそこに暮らす人々
     との交わりが徐々に彼女を変えていく。阿弥陀堂に住む老女 おうめ
     (
北林谷栄)、そのおうめの日々の語らいを文字にして、村の広報
     誌に「阿弥陀堂だより」というコラムを書く美少女 小百合(
小西真
     奈美
)など、人間としての豊かさを忘れていない村の人々。この
     人々と信州の四季が織り成す人間模様を描いた作品です。

今年の日本アカデミー賞を「たそがれ清兵衛」と二分した作品です。128分とい
う少し長めの映画ですが、見ていて飽きません。これと言って何かが起こることも
ありませんし、淡々と進むその展開が何となく見ていて安心感を誘うのです。
91歳の北林谷栄、映画出演9年ぶりというベテラン樋口可南子、新人小西真奈美
の3人がそれぞれの役を自然体でこなし、作品を支えています。特に、心の病を抱
えた医師の樋口可南子が徐々に自然に溶け込み、心が解放されていく過程で、顔の
表情まで微妙に変わります。いい女優さんだと思いました。北林谷栄さんについて
は何も言うことなしです。どこまでが演技で、どこからが彼女自身なのか全く判然
としない(分からせない)存在は凄いの一言です。そして小西真奈美、信州の美し
い自然と対を成すような役柄です。でも、全くわざとらしさが感じられない。今の
時代とはそぐわないようにも思う反面、「それを言ってはお仕舞い」的なこの作品
には、うってつけの女優さんです。
日本映画、こんな感じの作品が私は好きです。







五本目*愛と平成の色男

あらすじ:平成元年。混沌とした新時代に現れた男(石田純一)一人。愛車ジャ
     ガーを乗りまわし、昼間は歯科医、夜はサックス奏者としてスポット
     ライトを浴びている。仕事も恋愛も遊び感覚で24時間フル活動する
     不眠症のタフな奴。疲れを知らないこの男は「僕を徹底的に疲れさせ
     てくれる彼女」を追い求めているのだが・・。モテモテ男と5人の美
     女が織りなすスクランブル。そして最後の結末は?(ビデオジャケッ
     トより)

ここでは
鈴木京香です。NHKの連ドラ出身で、爽やかさと色気が上手くバランス
した存在感がいいです。物語の途中から不眠症の歯科医にして、サックス奏者の石
田純一にからむ役です。ストーリーそのものは、付き合う女性はたくさんいた方が
円に近づいていまく行く式の、ある意味軟派映画ですが、それでいてあまりバタ臭
くなっていないのがこの作品の特徴でしょうか? 
財前直見武田久美子といった
曲者女優が中々いい味をだしています。また、新人の頃の
鈴木保奈美も石田純一の
お茶目な妹役で出演していて、私の好きなキャラです。







四本目*波の数だけ抱きしめて

あらすじ:1991年、東京のある教会で結婚式が行われていた。
     そこに一人の青年が遅れて入ってくる。後方座席にはなつかしい顔。
     バージンロードを歩く彼女。思い出を背負ったままの彼は彼女の歩く
     後ろ姿を見送っていた・・。

     時は1982年、夏の湘南。
     FM局を作り、自分たちの音を湘南全体に響き渡らせたいと、大学最
     後の夏休みにそんな夢を追いかけ、青春を謳歌する若者達がいた。
     夏休みも終わりに近づいた開局の日、コスギ(織田裕二)はマリコ
     (
中山美穂)に高校時代からの思いを電波に乗せて伝えたが・・・。
     しかし、一人海外に飛び立ったマリコ。その側には、密かにコスギに
     想いを寄せるユウコ(
松下由樹)がいた。

     再び、10年後。結婚式が終わり、同じビーチで当時を振り返るコス
     ギとセリザワ(阪田マサノブ)。あの時のコスギの言葉をマリコは聞
     いたのだろうか? そこへ懐かしいユウコ、ヨシオカ(別所哲也)も
     集まって来た。11月の肌寒い湘南の海に仲間達の笑い声が響き渡り、
     どこまでも続いていた。

この作品、中山美穂主演の映画ということは十分理解しているのですが、私にとっ
ては松下由樹に出会える作品です。脇役のはずなのに断然輝いていて、中山美穂が
霞んでいます。相手役の織田裕二もいつも通り、優柔不断な役を過不足なく演じて
います。舞台は80年代初めの湘南、その雰囲気だけでことを運んでいるような映
画なのですが、大好きな作品です。挿入曲もセンスよく、画質、音質最高のLDで
す。DVD化されているどうか知りませんが、是非見て頂きたい作品です。繰り返
しますが、松下由樹です。最近のように大柄なハイミス(死語!!)という感じは
微塵もありません。







三本目*毎日が日曜日

あらすじ:ある平凡なサラリーマン家庭の朝。高校生の娘(
佐伯日菜子)と父親
     (佐野史郎)が朝食をとり、側でお母さん(
風吹ジュン)は娘のお弁
     当を作っているという当然の風景から映画は始まる。しかし、この後
     の話しの展開が少し捩れて来る。
     そして、その日の昼前の公園。すぐ近くのベンチに座る2人。1人は
     女子高生で早弁、1人にはスーツ姿のサラリーマン風で読書中。どち
     らにしても、この時間の公園には不似合いな2人である。暫くして気
     づき、顔を見合す2人、先程の親子である。娘はイジメにあい、登校
     拒否、父親は上司と合わず、エリート・サラリーマンの出社拒否→依
     願退職とどちらも行く所のない2人であった。
     しかし、2人はこれを機会に自宅学習を始め、更には便利屋まで初め
     てしまいます。それを見て慌ててオロオロするばかりの母親。遂には
     寝込んでしまう。それでも逞しく活動する2人はこの会社を成功させ
     てしまうのでした。

佐伯日菜子のデビュー作品です。この作品を見る限り、かなり将来を期待したの
ですが、私は彼女のこれ以外の映画を知りません。残念。
この作品での彼女は天真爛漫で、可愛くて、元気で、自分の娘なら最高と思える
存在です。イジメにあって登校拒否をしても、暗さはありません。積極的な出社
拒否の父(佐野史郎)と一緒に学習品をしながら、便利屋を始め、おろおろして
いるお母さん(風吹ジュン)を尻目に会社は大成功という思いっきり無責任な内
容ですが、でも許せてしまう。楽しい作品です。
当時新人だった佐伯日菜子も、今では、Jリーガーの奥さんで、子供もいるよう
です。そろそろまたいい作品に出てもらいたいですね。一方、最近益々いい味を
出している風吹ジュン。10数年前東京で乗ったタクシーが信号待ちをしている
時、ふと横を見ると彼女が運転する車も止まっていました。サングラスをして、
本当に「いい女」って感じでした。
この作品はLDで見ていますが、画質が良くない。一体にどんなフィルムからテ
レシネしているのか首を傾げてしまいます。







二本目*居酒屋ゆうれい

あらすじ:横浜で居酒屋を営む壮太郎(萩原健一)には、病床の枕元で「絶対に再
     婚しない」と約束をして先立った妻(
室井滋)がいた。そのため、周囲
     の再婚の勧めにも耳を貸さず、壮太郎は1人で居酒屋を切り盛りしてい
     た。しかし、その壮太郎の周りに不思議な女性(
山口智子)が出没する
     ようになり、何とはなしに気になり始めていた。そん時、壮太郎の兄か
     ら見合いの話しが舞い込み、乗り気ではないももの、写真を見てみると
     あの女性です。
     見合いで意気投合した2人は結婚し、居酒屋の2階の住まいで初夜を迎
     えることとなりました。しかし、その時、「絶対に再婚しない」と約束
     を破ったといい、先妻がゆうれいとなって現れます。それまで、妖精の
     ように実在感のなかった後妻の山口智子が俄然実在感を帯びて先妻に対
     抗する。そして、好きな男を挟んだ人間とゆうれいの不思議な三角関係
     で、話しは進みます。

室井滋、山口智子、萩原健一の3人が最高にいい。ストーリー展開もスマートで、
最近では出色のコメディーです。
山口智子が前半の妖精のような存在から後半の肉体を持った女としての存在に変
わり、可愛さと仄かな色気を漂わせる変化がいい。また、先妻の室井滋のパワー
全開の演技と対抗する展開もいい。そして、それを飄々と側で支える萩原健一の
気取らない男らしさ。全体に非常にバランスの取れたいい作品と思います。
但し、1つだけ残念なのは、画面がスタンダードサイズにトリミングされている
ことです。多分、ビデオ用マスターを使用したからなのでしょう。これがオリジ
ナルと同一であれば、文句なしなのですが。







 一本目*愛の新世界

あらすじ:あるホテルのエレベーターの中で若い2人の女が出会う。1人は
     レイ(
鈴木砂羽)と言い、SMプレイの女王様、もう1人はアユ
     ミ(
片岡礼子)と言い、ホテトル嬢である。共に夜の世界と昼間
     の世界では違う顔を持った女同士、何となく意気が統合し、物語
     は進展する。レイはこの仕事で、昼間の活動(小さな劇団の団員)
     の資金を稼ぎ、劇団仲間とも上手く関係を持ち、全てに屈託がな
     い。一方のアユミは結婚願望が強く、せっせとスケベオヤジ達か
     らチップを集め、結婚資金を貯めているが、結局、恋人に裏切ら
     れてしまう。それでも懲りない、アユミである。そんな彼女達の
     カラっとした生態が描かれ、その間に、アラーキー(荒木 経惟)
     氏撮影の写真が挿入される。

この作品が好きで、これまではLDで見ていましたが、DVDも買ってしまいま
した。好きな理由は、世の中を自由に泳ぎまわっている女の子達の元気さで、つ
いこちらも引き込まれてしまうからです。(反対に、男達の情けないこと。)本
来であれば、彼女達の商売が裏の世界で成り立つものですから、話も暗くなりが
ちですが、主演の鈴木砂羽と片岡礼子の2人の存在そのものが作品を支えて、か
らっとした作品に仕上がっています。また、ストーリーの進行もスピディーで、
見ていて飽きさせません。ただ、折角DVD化されたのに、残念だったのは画質
がLDと全く同一だったことです。


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